おかえりモネが完結した

NHK朝ドラの「おかえりモネ」が完結した。東日本大震災後の東北地方を舞台に選んだ挑戦的な作品だ。

序盤で主人公の百音とその幼馴染が登場した時に、正直不安がよぎった。「現代がテーマ」「男女数人の幼馴染」という要素が、伝説の朝ドラ「まれ」を思い起こさせたからだ。

「まれ」は、夢ばかり追いかけている父親を反面教師として「まじめにこつこつ」をモットーとしている主人公が、目指すべき夢を見つけてそれに向かって邁進する物語だ。ただ、次第に当初の主人公のキャラ設定からはずれた行動が目立ち始め、最終的には「まじめ」でも「こつこつ」でもなくなる、という悪い意味でアバンギャルドな脚本であった。父親役として大泉洋が出ていたのがきっかけで見始めたのだが、大泉洋への興味もこの脚本の前にはかすんでしまい、水曜どうでしょう好きの友人と「まれ」へのツッコミをツマミに飲みにいくことが日常になっていた (それはそれで楽しいもので、文句を言いながらも全話鑑賞してしまった)。完結後も話題には事欠かず、主要登場人物のうち1名が新興宗教の広告塔となり、1名が性的暴行で逮捕されたことで再放送が難しくなり、名実ともに伝説の朝ドラとなった。

話が逸れてしまったが、「まれ」にも男女数人の幼馴染が登場しており、ドラマ全体としてコメディタッチのおふざけな雰囲気で脚本の意味不明さをカバーしていたため、被災地が舞台の「おかえりモネ」でこれをやられると舞台が舞台だけに笑いごとにならないな、と感じてしまったのだ。

ただ、この心配は杞憂に終わった。震災後10年をかけて登場人物がそれぞれの心の復興に向かっていく様がじっくりと描かれており、復興とは物理的なモノだけではないということを再確認させてくれた。

また、決して底抜けに明るいストーリーではなかったが、登米の人々や菅波先生のキャラクターによって和まされる場面もあり、毎週楽しく鑑賞することができた。特に菅波先生の不器用ながらもモネの自問自答を優しくガイドする様は非常に尊さがあった。

災害、特に近年発生したものをテーマとして扱う連ドラを作成するのは非常に神経を使うと思う。難しいテーマにもかかわらず、おかえりモネは1話目から最終話まで軸がぶれずに丁寧に物語が描かれており、1本の映画を見ているようでもあった。

このような番組が作れるのであればNHKはぶっ壊さなくても良いなと思った。(受信料はもうちょい安くしてほしいが)